Uターン・農園経営 家族優先のくらしを選び
農家として歩みはじめる

野菜・果物・花きを栽培
農閑期のない安定経営

温暖な気候に恵まれた和歌山県は農業が盛ん。「今年の大寒波のとき、生まれて初めて御坊に雪が積もった景色を見た」と教えてくれたのは、専業農家の長男として生まれた山野晋矢さん。ハウス約30棟、畑約600坪を持ち、5月はスイカ、7月はメロン、8～9月は花き栽培の準備をして10月から春まではスターチスとダリア、カスミソウなどを収穫。同時に野菜も育てていて、1年を通してあらゆる作物を手がけている。

「農家の醍醐味は採れたてを家族に食べさせてあげられること」と言う山野さん。実は野菜が苦手で「目の前にあったから食べていただけ」だったが、一度地元を離れてからまた戻ってきたとき、驚いたのは野菜のおいしさだった。「鮮度に価値がある。どんなにお金持ちでも、自家栽培していなければとれたては食べられませんから」と誇らしげに笑う。

家族との将来を考えたとき
農業という選択肢があった

いつかは地元に帰りたい、家業を継ぎたい、でもタイミングが難しい。そう悩む人も多いだろう。山野さんも京都府警で寝る間も惜しんで働き、機動隊時代にもらった表彰状は数知れず。活躍していただけに辞め時が難しく、お世話になった上司、先輩への恩返しがしたいという想いも強く御坊市に戻るタイミングを悩んでいた。

家庭を持ち、30歳を迎え、将来についてあらためて考えていとき、山野さんのお父さんが農作業中にケガをしてしまう。農家にとっての繁忙期だったため、仕事を休み実家を手伝った。その結果、職場でも将来的には実家の農家を継ぐ人間だと印象づける機会となり、円満に退社。「みんなが次のステップを応援してくれて、うれしかった」と振り返る。

家族へのケアも用意周到。実家へ帰省するたびに御坊市の食べ物のおいしさと自然の豊かさをプレゼンしていたため、家族も自然と新生活になじんでいったと言う。

子どもとの時間を大切にできる
家族ありきの生活

Uターンする前と今、大きな違いは家族と過ごす時間。警察官の頃は勤務体系が特殊で、いっしょに住んでいても話せない日があったが、今は違う。家から職場まで徒歩10秒。朝、昼、夜と家族揃って食事ができ、農作業をする隣で子どもが遊んでいる。子どもの体調が悪くなれば作業を中断し看病もでき、家族最優先のくらしができるようになった。

祖母も両親も近くにいるので、いっしょに働き、いっしょに子育てをしている状態。家族は多ければ多いほど、お互いフォローができるのが大家族のいいところだと実感している山野さん。「子どもが草むしりをしてくれるだけでも本当に助かるんです。虫やいろんな植物と触れ合うことで危機察知能力も上がりますし、農業と子育ての親和性は高いですね」。

農家として御坊市に貢献したい
メロンのブランド化を目指す

今、意欲的に取り組んでいるのがメロンのブランド化。やまの農園のメロンはサイズが立派で、大きいものは3kgを超える。メロンが高級フルーツであることからもわかる通り、栽培のハードルは高く、天候・土・技術の3つが揃わないとうまく育たない。「大きな果実が収穫できるのは、この道40年以上の親父の腕によるもの。いつかうちのメロンが『御坊の山野さんのメロン』として店頭に並ぶのが夢ですね」。

山野さんは「田舎にこそチャンスが隠れている」と断言。「今はインターネットがあれば、どこに住んでいても仕事ができますよね。野菜をおすそ分けするとお礼にお魚がもらえるなどのご近所付き合いもあり、食費が安い面も生活しやすい。幸せの価値観は人それぞれだけれど、僕らはスケールの大きな自然の中でくらし始めたことで、心が潤ったと感じています」。

歩いて2分で海に着くので、子どもと一緒ならシーグラスを拾ったり水浴びをしたり。1人で夜釣りに出かけアオリイカを釣る日もあります。遊具がたくさんある御坊総合運動公園や白浜のアドベンチャーワールドも好きです。