Iターン・看護師 結婚・出産を経て
働くまちから暮らすまちへ

総合病院や施設勤務を経て
地域医療の現場へ

看護師とひとくちに言っても、勤務先によって働き方はさまざま。規模の大きい大学病院や総合病院もあれば介護施設、福祉施設、そして開業医が開く診療所（クリニック）などがある。総合病院と介護施設をそれぞれ経験した久堀志穂美さん。育児との両立のためのベストな選択肢として、新たに選んだのがクリニック勤務だった。

大病院との違いは、外来のみで診療時間も限られていることにあるが、それ以上に、地域の人たちとの距離が近いことも大きい。少人数なのでスタッフ間での連携も取りやすく、和気あいあいとしたアットホームさが今の久堀さんにとっての働きやすさに繋がっている。

慣れ親しんだ土地を離れて嫁いだ今、自分と家族が暮らすまちの一員として、地域を意識するようになったと言う。「地域に根付いたクリニックならではの患者さんのニーズに合わせた提案がしていけたら」と話す。

看護師の仕事と子育てを
両立できる選択肢

働く女性としての久堀さんに訪れた転機は「出産」。子どもが生まれたことで、家族の生活はおのずと子ども中心に。夜勤がつきものの総合病院や介護施設では育児との両立が難しいと考え、しばらく育児休暇の期間を過ごした後に、自宅近くに開院したクリニックに転職することを決めた。

勤務時間が決まっているだけでなく、家が近いため朝は子供を小学校に送り出しした後に出勤し、1時間半ある昼休憩時には家に帰って洗濯物を取り入れたり、食事の準備ができる自由さが時間のないママにとって何より有難い。また日曜祝日が休みなことから、子どもとしっかり過ごす時間も取れている。先生をはじめ職場に子育て世代が多いことから、理解も得られやすく、情報共有もできて、子育てをするのはすごく働きやすい環境が整っているという。

仕事内容は採血や点滴、各種検査など。外来のみとはいえ、コロナ禍の真っ只中には発熱外来に対応していたことから、抗原検査の受診が激増。「家に菌を持ち込まないよう細心の注意を払っていました」。

地元とは違う食や文化を
存分に満喫！

就職当時は未知の場所だった御坊市。言葉の違いや土地勘のなさで最初は戸惑ったが、勤務先にいる同郷の先輩に教わりながら少しずつ土地勘を付けていったそう。

そんな久堀さんが感じた御坊の印象は「食べ物がおいしい！」。実家が海から離れていたことや稲作が中心だったことから、野菜や果物はもちろん、魚介類の新鮮さに驚いたそう。特に感動したのは大好きなスイカを満喫できる食べきりサイズの小玉スイカ「ひとりじめ」。地場の食べ物が豊富に手に入る環境は、母親として安心できる点でもある。また食べもの以外にも花が手頃な価格で買えるのも産地ならでは。「ちょっと花瓶に入れて飾ったり、生活にさりげなく花を取り入れられています」と、今ではすっかり御坊を満喫している。

実は久堀さん、実家の近くに大きな病院がなかったこともあり、出産も宮崎には帰らず御坊で産むことを選択したそう。結果的に隣に住む義父母のサポートと保健師のフォローで、不安を感じることなく出産に臨むことができた。

娘と机を並べて
勉強する日を楽しみに

最近娘さんが「将来看護師さんになって一緒に働きたい」と言ってくれたという。「自分を見てそう言ってくれるのが嬉しいですし、いつか他に自分のやりたいことを見つけたとしても、それを応援して支えていけたらなと思っています」と嬉しそうに頬を緩ませる久堀さん。

そんな娘さんに背中を見せていけるよう、今の目標は資格取得だ。看護師の取れるさまざまな資格のうち、糖尿病内科を掲げる職場で役立ちそうな「療養指導士」などがある。まだ子育ての合間での勉強になるが、他にも「子どもの手がかからなくなってきたら」と趣味や運動など、やりたいことが次々と浮かんでくる。

「娘が勉強する隣で並んで勉強できたらすごい楽しいんじゃないかって妄想中なんです」。そう言って娘さんに目を向けた久堀さん。その笑顔から、自分にとってベストな働き方を見つけ、理想のライフスタイルへとしっかりと歩みを進めているのが伝わってきた。

お散歩したり、自転車に乗って家族で近所に遊びに行くのが一番落ち着きますね。春には八幡山や道成寺に行ってお花見したり、蓮を見に行ったりしました。子どもの足でも行ける範囲にいろんなスポットがあるのが嬉しいです。